研究概要 |
高スピン偏極材料として期待されているマグネタイト(Fe_<3>O4)に着目し、高品質のスピネル型のマグネタイトが(100)InAs上に45度回転した形でMBE成長すること、酸素分圧の制御により結晶の成分調整ができること、またその磁化特性により面内方向に磁化容易軸を持つ強磁性体の特性を示すことがあきらかになった。一方、鉄薄膜電極/インジウム砒素チャンネルで構成されるいわゆるDatta-Das型スピントランジスタ構造を作製し、スピン軌道相互作用に基づきゲート電圧の制御によるチャンネル中電子のスピン歳差運動を制御することにより生じると考えられる電流振動を観測した。これらの観測された実験結果を理論的に裏付けるために一連のモンテカルロ計算を行った。いわゆるInAs系Datta-Das型スピントランジスタにおいて、2っのスピン軌道相互作用(Rashba項およびDresselhaus項)が揃った条件のときは、スピン緩和が消失することが示された。このことは室温においても非弾性領域でも成り立ち、スピン制御電流振動をすることが示された。また横方向電界(ドレイン電圧)増大とともにスピン振幅が増大する(スピン緩和長が伸びる)ことも示され実験結果ともよく一致していることが明らかとなった。その他、鉄薄膜細線の磁化反転特性はマイクロマグネティックス解析の結果、鉄薄膜細線界面から5nm程度と浅くかっごく近傍のエッジの狭い(0.1um幅)領域のみ最大400mT程度の漏れ磁場があることが得られた。また鉄/砒素系半導体界面に生成される可能性のあるAs_<2>F(anti-ferro),AsF(anti-ferro),AsF_<2>(normal meta1)のいずれの鉄砒素系化合物の生成エネルギーも強磁性相より低く安定していることが第一原理計算により明らかになった。熱的安定性の点からも鉄酸化物系の開発が望ましいことを裏付けている。
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