研究概要 |
神経細胞活動計測において,生体組織内の空間的な電位分布を多点で同時に計測するための電極開発が必要とされている。VLS結晶成長を用いたシリコンプローブは,センサー部となるプローブのサイズ,長さ,位置を制御可能であり,微細プローブ電極としてのアレイ化が可能となる。また,シリコン結晶成長を用いるため,標準的なCMOSプロセスの後にプローブ形成が可能であり,同一基板上に信号処理回路を一体化することができる。これらを集積化した高機能スマートセンシングチップは,脳神経科学における信号解析のための強力なツールとなることが期待されている。今年度は,最終年度として主に下記の事項を実現してきた。(1)3次元形状用のリソグラフィプロセス,結晶成長の観点での議論,及びVLS再成長モデルの適用により,プローブの3次元化プロセスを改善した。デバイス製作として,このような長さの異なる3次元プローブを既存のICプロセスにより配線チップ上に形成,またプローブの電気特性,機械的特性を評価し,実際の生理実験で試用できることを示した。(2)前年度と同様に,本チップにバッファアンプとして実際にインピーダンス変換回路を搭載するテーマを進めた。実際の生理実験を考慮し,チップ被覆,実装までを行い生体同様の生理溶液中での電気的特性を検討した。回路設計と同様の増幅率を確認し,更に細胞外電位100μV以下の電位取得にも成功している。(3)将来的な組織内薬液投与を目的とし,これまでの電極チップに薬液投与用のマイクロチューブアレイをICプロセスで集積化した。チューブ薬液吐出特性,機械的特性を考察し,実際の生理実験で使用できることを示した。以上の研究結果,及び前年度までの成果より,本研究課題の"三次元微細単結晶シリコンプローブを集積化した高機能スマートセンシングチップ"を遂行したと考える。
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