研究概要 |
本研究は,廃棄物処分場跡地の形質変更に伴って発生する環境リスクを適正に管理・制御しうる施工方法を確立するために,跡地利用に伴う生化学的雰囲気の変化が埋立廃棄物中の有害物質の挙動に及ぼす影響の評価,跡地利用に伴う掘削・構造物の設置が処分場遮水工の性能に与える影響の評価,跡地利用に伴う環境リスクの評価とその対策工法の体系化,を目的とした研究を実施するものである。本年度の研究実績は以下の通りである。 (1)海面処分場内部における生化学的環境の変化が重金属の動態に及ぼす影響の評価 廃棄物処分場の跡地利用において,廃棄物層内の水分量や酸素濃度が変化すると微生物活動に伴う有機物の分解や化学的環境の変化が進行し,浸出水の水質が悪化することが予想される。今年度は、焼却灰海面埋立処分場の廃棄物層,底部粘土層における生化学的条件と重金属の存在形態を大型カラム試験によって評価し,重金属の処分場内における保持機構を解明した。 (2)廃棄物処分場遮水工の構造安定性の評価 内陸処分場の底部遮水工を対象として,構造安定性と遮水性を両立する遮水工構造の最適化や跡地利用において許容できる上部荷重の推定を行った。昨年度実施した、内陸処分場遮水工に用いられる材料(粘土ライナー,遮水シート,不織布)間のせん断抵抗特性の実験結果に基づいて、構造安定性の評価のための設計方法を提案するとともに、構造安定性に優れた処分場の遮水工構造を示した。 (3)粘土ライナーの遮水性能の評価 汚染物質の拡散防止技術として使用されうるソイルベントナイト壁、および海面処分場の底部海底粘土層を対象とした遮水性能の評価試験を実施した。前者については、地盤中に存在する無機汚染物質に曝露された場合の遮水性能、後者については、跡地利用時の構造物建設の基礎工として鋼管杭を粘土地盤に打設した場合の、杭-粘土境界面における漏水が遮水性能に与える影響をそれぞれ定量的に示した。
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