研究概要 |
本研究では、「既存鉄筋コンクリート造建築外装部材の戦略的メンテナンス最適化支援システム」を開発することを最終目的とし、本年度は,以下の項目の要素研究を実施した. (1)外装部材の性能評価構造の知識化・体系化 既往の文献調査を行い,特に壁材料を中心として性能評価構造の知識化を行った. (2)各種補修材料の劣化メカニズムの解明及び性能劣化曲線の形状把握に関する実験的研究 各種補修材料の性能の評価には,定量的な性能評価とその耐久性の把握が必要である.そこで,実験的研究により劣化メカニズムの解明と性能劣化曲線の把握を行う. 具体的には,仕上げ材料の躯体保護性能の定量化に向け,仕上げ材料中の劣化因子の移動現象を,溶解拡散現象と捉えたモデルの提案を行い,実験的に検証した.実験方法としては,仕上げ材用の拡散セル試験を開発し,仕上げ材料中の拡散係数を差圧法により測定すること方法を提案した.このことにより,仕上げ材料の躯体保護性能を個別の物性値として求めることが可能となり,さらに,仕上げ材料自体の性能の耐久性を定量的に評価することが可能となった. 仕上げ材料は,市販の11種の複層仕上げ材料に加え,ペイント材料の試験体を作成し,順次促進劣化試験および暴露試験により,躯体保護性能および美観,テクスチュアなどの性能の経時変化を測定中である. (3)外装材料の美装性に関する研究 外装部材の汚れの定量化を目的として,2次元フーリエ変換を用いた視覚情報の定量的評価に関する研究とその分析を行った.本手法により,外装部材の汚れの定量的評価が可能であることが明らかとなった.また,外装部材の美観評価に関して,個別の建築材料の美装性評価を目的として,生体情報による評価を試みた.すなわち,瞳孔,心拍数などを用いて,人間の感情を定量化する一連の実験的研究を行った.その結果,建築材料の美装性を生体情報によりある程度定量化できることが明らかとなった.
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