研究課題
本研究では、古墳壁画の保存を目的として、壁画に用いられている漆喰や石材、彩色材料の種類や物性を、可能な限り非破壊的手法を用いて調査し、また石室内の空気環境(空気組成の他に浮遊菌などの生物的環境条件も含む)、周辺の気象や地盤中の水分状況も調査して、壁画の保存状況との関係を検討する。平成17年度については、高松塚古墳、キトラ古墳におけるこれまでの環境測定データを整理してまとめた。特に高松塚古墳については、発掘されてからこれまで約30年間の温度データを元に解析して、石室内の温度が80年代以降の気候変化による外気温上昇の影響を受けて上がってきたことや、フランスのラスコー洞窟でも同じような気候変化の影響を受けている可能性があることなどが明らかになった。古墳石室内の生物的環境については、高松塚古墳・キトラ古墳の石室内で繁殖が確認された菌類のうちフザリウム属、トリコデルマ属に属する36株について遺伝子配列解析による分子レベルの解析を行い、基本系統樹の作成を終えた。またバクテリア類についても同様の手法で系統解析を行った。また、菌類の侵入経路について明らかにする目的で、周辺外気や土壌、また石室周辺土壌からの菌類採取と分離手法について検討した。この他、関連した調査として国内では大分県日田市にあるガランドヤ古墳、国外では韓国の天馬塚(慶州)と武寧王陵(公州)、イタリアのタルキニア地下墳墓群を調査し、特に武寧王陵についてはその保存調査にあたった公州大学校の徐萬哲教授と、現在の保存状態について研究協議を行った。
すべて 2006
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保存科学 第45号
ページ: 33-58
ページ: 59-68
ページ: 69-78
ページ: 77-92
ページ: 93-106
ページ: 107-120