研究課題
本研究は古墳壁画の保存を目的として、壁画に用いられている漆喰や彩色材料、石材などを可能な限り非破壊的手法を用いて調査する。また石室内の空気環境、周辺の気象や地盤中の水分状況も調査して、壁画の保存状況との関係を検討することなどを行った。また調査する空気環境の項目としては、空気組成だけでなく、浮遊菌などの生物的環境条件も含めて調査を行った。調査対象としては昨年度に引き続き、高松塚古墳・キトラ古墳を中心に調査を行った。高松塚古墳については、石室の解体作業と重なったために、石室の中だけでなく、石室を構成する石材の合わせ目や裏側などからも試料を採取することができた。両古墳の石室内外から採取した試料について、菌類や酵母、バクテリアについて遺伝子配列解析による分子レベルの系統解析を行った。その結果、両古墳で類似のものもあるが、特にバクテリアについては優占種が異なっていることがわかった。国内における調査として、熊本県にある装飾古墳の保存状況について、保存を担当している現地の関係者と共に調査した。また高松塚古墳と同様、カビの被害を受けているラスコー洞窟保存の関係者を招聘して研究協議を行った。その結果、古墳・洞窟内の微生物について日仏で同じような研究を進めていることがわかり、相互の研究成果から、場所も保存条件も全く異なる高松塚とラスコー洞窟で、類似したカビ(フザリウム属)が生育している興味深い事実が明らかになった。この他、11月に韓国ソウルで開催された東アジア文化遺産保存国際シンポジウムで、高松塚古墳に関する研究成果を発表した。
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『シルクロードの壁画』東京文化財研究所文化遺産国際協力センター編 言叢社発行
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