本研究では、水素の製造・輸送・貯蔵・エネルギー変換といった一連の水素エネルギー利用プロセスにおける安全性・信頼性を飛躍的に向上させる技術として、従来にない新規な方式にて作動する水素センサの開発を推進している。従来の水素センサが水素ガス吸着による電気的性質の変化を検出原理としているのに対し、本研究におけるセンサは水素雰囲気におけるセンサ媒体の光学特性変化を検知するという新しい原理に基づいている。この水素センサは室温作動かつ非接触センシングを可能とするため、安全性の向上に資する革新的なセンシング技術となり得る。ナノレベルの薄膜積層構造を基本とする本センサにおいて、材料設計・構造設計・評価を通じ、(1)高感度特性(低濃度応答性・広作動濃度範囲・線形応答性)、(2)高速応答性(水素の解離吸着・脱離反応制御)、(3)高耐久性(薄膜-基板間の界面強度・応力制御)の達成を図るとともに実用性評価・実装技術開発を推進することにより、高性能かつ汎用性の高い水素センサの実現を目指している。 本年度は、本センサの新たな作製方法である、電気めっき法と無電解めっき法によりPd薄膜センサを作製し、特性を評価した。めっき法の違いによる特性の違いを、パラジウムの酸化、還元、水素化の各反応過程から考察した。また、光源となる発光材料等、本センサの実用化の際に必要となる周辺材料の合成と評価を行った。
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