研究概要 |
合金の結晶粒微細化方法として、申請者らは、HDDR現象に注目した。これまでに萌芽研究において、現用Mg-3%Al-1%Zn(AZ31合金)について水素吸放出熱処理を施すことにより、HDDR現象を発現させ、結晶粒を0.1〜0.2μmに超微細化することに成功した。ところで、これまで水素との親和力の弱い元素を主元素とする合金において、その方法の有効性は確かめられていない。そこで、本研究では、Al、Cu、Au、Ag等の水素との親和力の弱い元素を主とした非鉄系合金に、Mg等の水素との親和力の強い元素を含有させて、HDDR現象発現の可能性を検討するとともに、結晶粒微細化効果の有無を追求することを目的とする。 本年度は、Al-Mg系合金について検討をおこなった。Al-3.0,5.0,7.8mass%MgについてHDDR処理後の結晶粒径と合金組成の関係について調査を行ったところ、Mg含有量と共に得られる結晶粒径は小さくなることが分かり、Al-7.8mass%Mgでは10〜20nm程度に微細化された。 また、Cu径合金についても調査を開始した。Cu-Mg系については、適当な水素中熱処理条件と脱水素化条件を組み合わせることにより、それぞれMgが水素化および脱水素化することが分かり、HDDR現象の発現が確認された。得られる結晶粒径が数10nm程度と微細な結晶粒が観察されているが、微細組織における処理される領域が数割程度にとどまり、今後の処理条件の最適化が必用である。Cu系については、実用材への適応を検討中である。 よって、本研究により、Al系のほかにCu系合金において水素熱処理により結晶粒を超微細化させる有効な方法であることが確認された。
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