合金の結晶粒微細化方法として、申請者らは、HDDR現象に注目した。これまで水素との親和力の弱い元素を主元素とする合金において、その方法の有効性は確かめられていない。そこで、本研究では、Al、Cu、Au、Ag等の水素との親和力の弱い元素を主とした非鉄系合金に、Mg等の水素との親和力の強い元素を含有させて、HDDR現象発現の可能性を検討するとともに、結晶粒微細化効果の有無を追求し、合金の高機能化を検討することを目的とする。 本年度は、Al-Mg系、Cu-Ti系およびAu-Mg系合金について、HDDR処理の適応可能性と微細組織の変化について調査した。Ag系については、HDDR現象が発現する処理条件について更なる検討が必要であるが、Al-Mg系については、実用合金として5052系合金に対してHDDR処理を施し、機械的性質の変化について調査したところ、微細化される領域が全体に行き渡らなかった為、大きな変化はなかった。またCu-3mass%Ti系合金について水素化処理により、現用二元系合金では最大の1000MPa以上の強度に上昇し、電気伝導率も22%IACSに向上させることに成功した。またAu-Mg系合金については、室温での電解溶液中での水素チャージに成功し、その後脱水素処理を施すことによって、HDDR現象による結晶粒微細化することが判明した。
|