研究概要 |
ペプチドは低分子で比較的合成しやすいが、ビルディングブロックであるアミノ酸は20種類あるためそのバリエーションは膨大で、新規機能性ペプチドの探索は困難である。われわれはすでに、膨大な生物情報を解析し基本となる因果関係のルールを抽出する手法(ファジィニューラルネットワーク、FNN)を確立した。本研究ではペプチド探索研究に、インフォマティクス手法を組み合わせた、新しい概念である"ペプチドインフォマティクス"の確立と検証を目的とする。 1)がん治療用ペプチド医薬の開発を目的として、ペプチドアレイを用いてTRAIL配列中から細胞死誘導ペプチドの探索を行った。その結果、新規細胞死誘導ペプチド5個が探索でき、RNSCWSKDという配列が最も効果が高く、可溶化ペプチド(2mM)でも効果があり、多量体(MAP)化することで0.01mMでも効果があることがわかった。また、同様にアポトーシスを誘導することが知られているFasLの配列から探索した結果、CNNLPという5-merの配列が得られ、残基置換ペプチドを作成して比較したところ、NNNLP, CNNNP, CNNLT, CNNLW, CNNLYなど29種類のまったく新規の細胞死誘導ペプチドの探索に成功し、1残基目のサイズが重要で、2残基3残基目はAsnが好ましいことがわかった。 2)ペプチドアレイデータの解析ツールを開発するために、FNNを改良したブースト化ファジィ分類器手法(BFCS)を開発した。BFCSを、免疫応答に関係するMHCクラスII分子に結合するペプチドの解析に応用した結果、従来法よりも高い推定精度(84.6%)のモデルが構築できた。また1残基目に、Ile, Leu, Phe, Valなどの疎水度が高く比較的大きいアミノ酸残基が使われると、MHC分子に結合しやすいというルールも発見できた。 3)その他、がん特異的抗原になり得る候補ペプチドの探索に成功した。接着ペプチドもスクリーニングし、新規のペプチドを複数探索している。無機材料としてZnOナノ微粒子に選択的に結合するペプチドについても探索を始めた。
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