研究概要 |
ペプチドのバリエーションは6-merでも6400万種類に達するほど大きく、新規機能性ペプチドの探索は困難である。われわれは、膨大な生物情報を解析し因果関係のルールを抽出する知識工学的手法を確立しており、本年度も引き続き、ペプチド探索研究に、本手法を組み合わせた、新概念"ペプチドインフォマティクス"の確立と実証を行った。 1)多分化能をもつ間葉系幹細胞に対する接着促進可能なペプチドの探索を行った。フィブロネクチン、ラミニン由来のペプチドを探索した結果、NLLPG,ALNGR,VRYYR,GYIIR,VFVQRLなどの新しい細胞認識ペプチドが探索でき、脂肪細胞や骨芽細胞への分化が促進されるとまったく新しいペプチドが得られた。 2)半導体ナノデバイスに使える酸化亜鉛ナノ粒子を認識するペプチドの網羅的探索と認識ルールの抽出を行った。6残基のランダムペプチド422種類をスポット合成し、微粒子との結合実験の結果を知識情報処理アルゴリズムで解析した結果、N末端1残基目のサイズが比較的大きく、4残基目の電荷が大きいとき、酸化亜鉛粒子に接着しやすいという粒子認識ルールを得ることができた。実際にこのルールに合致するペプチドではランダムペプチドに比べ1.7倍以上酸化亜鉛ナノ粒子にしやすいことがわかり、また、結合能の高いHYQSNW,HVNLHS,RCARRYでは酸化亜鉛粒子に対する特異性も保持していることがわかった。 3)胆汁酸結合ペプチドの探索を行った。胆汁酸はミセルを形成して腸内でのコレステロールの吸収をつかさどる。胆汁酸に結合し、ミセル形成を阻害するペプチドは、コレステロール代謝改善作用を発揮する可能性があり、これまでに唯一大豆蛋白質由来のペプチド、ソイスタチンが知られている。大豆蛋白質由来の網羅的ペプチドアレイを作製し、胆汁酸結合を評価した結果、強い結合強度を示す配列が数個見つかった。またソイスタチンの配列を改変することでも結合ペプチドが見出された。こられの配列の結合ルールの探索も進めている。
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