研究課題
基盤研究(A)
ペプチドのバリエーションは6-merでも6400万種類に達するほど大きく、新規機能性ペプチドの探索は困難である。われわれは、生物情報を解析し因果関係のルールを抽出する知識工学的手法を使い、ペプチド探索研究に、本手法を組み合わせる新概念"ペプチドインフォマティクス"の確立と実証を行った。1)マウス線維芽細胞を用いて、643種類のランダムな5-merペプチドライブラリーで細胞接着を評価しペプチドインフォマティクス解析した結果、N末端アミノ酸(P1)のサイズ、2残基目(P2)の電荷、4残基目(P4)のサイズが重要との解析結果を得た。ルールに合致する50ペプチドを合成して評価した結果、活性の高い配列は84%含まれることがわかり、ランダムライブラリーで得られた結果(19.6%)と比較して十分に高く、線維芽細胞の接着に重要なルールであることが実証できた。一方、フィブロネクチン、ラミニン由来のペプチドを使って、多分化能をもつ間葉系幹細胞に対する接着促進可能なペプチドを探索した。その結果、NLLPG,ALNGR,VRYYR,などの新しい細胞認識ペプチドが探索でき、脂肪細胞や骨芽細胞への分化が促進されるという新規な知見が得られた。2)酸化亜鉛ナノ粒子を認識するペプチドの網羅的探索と認識ルールの抽出を行った。6残基のランダムペプチド422種類をスポット合成し、ペプチドインフォマティクス解析した結果、N末端1残基目のサイズが大きく、4残基目の電荷が大きいとき、酸化亜鉛粒子に接着しやすいというZnO粒子認識ルールを得ることができた。実際にこのルールに合致するペプチドではランダムペプチドに比べ1.7倍以上酸化亜鉛ナノ粒子にしやすいことがわかった。3)ペプチドアレイデータを解析し配列の特徴を、正確にルールとして抽出するため、Dynamic Programingを用いた配列のマルチプルアライメントの新手法を開発した。4)胆汁酸結合ペプチドの探索を実施したところ、強い結合強度を示す配列が数個見つかった。
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