大型の商船の主機関として広く用いられている舶用低速2ストローククロスヘッド型ディーゼル機関は、シリンダを潤滑するために強制的にシリンダ壁に潤滑油を供給(シリンダ注油)しており、他のディーゼル機関と異なり排出されるPMにシリンダ油由来成分が多く含まれることが予想される。シリンダ注油量を変更して機関を運転し、PM濃度に及ぼす影響を調べた結果、シリンダ注油量を減少させると、PM濃度も減少することがわかった。 また、排出されるPMが燃料油から生成されたものか、あるいは潤滑油から生成されたものかを調べることを目的として、燃料油(A重油)、シリンダ油および採取したPM中に含まれる金属成分の分析を波長分散型蛍光X線分析法にて行った。燃料油とシリンダ油の分析結果から燃料油にはほとんど含まれないカルシウム、亜鉛、リンがシリンダ油には比較的多く含まれており、これらの成分を調べることによりPMの起源を特定できる可能性があることがわかった。また、ブランクのフィルタとPMを捕集したフィルタの分析結果の比較から、PMにはカルシウムおよびリンが含まれること、シリンダ注油量を増加させてPM捕集量が増えると含まれるカルシウムとリンの量も増加することがわかった。これらの結果から、舶用2ストローク機関からのPMにはシリンダ油由来成分が含まれること、シリンダ注油量を増加したときに増加するPMはシリンダ油由来成分であることが示唆される。
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