舶用大形2ストロークディーゼル機関からの粒子状物質(PM)排出特性を把握し、PMおよびNOxの排出削減を検討することを目的として、供試機関(3UEC37LA機関、単流掃気、排気タービン過給機付単動クロスヘッド型、静圧過給方式機関、シリンダ内径:370mm、ストローク:880mm、出力:1105kW、回転数:188rpm)の運転・計測を行った。得られた結果は以下の通りである。 舶用特性に従って機関負荷率を変化させて計測した結果、PM排出率は25%負荷時の0.4g/kWhから100%負荷の0.5g/kWhまで、負荷率とともに増加する傾向を示した。硫黄分濃度の異なる燃料油を使用して機関を運転して計測を行った結果、燃料中の硫黄分が増加するとPM排出率は増加する傾向を示した。PMの成分分析を行ったところ、燃料中の硫黄分が増加すると、硫黄分から生成されるサルフェートだけではなく、Dry Soot(固形の炭素分)およびSOF(Soluble Organic Fraction、PMのうち有機溶剤に溶けるもの)も増加していることがわかった。シリンダ油供給量を低減するために、シリンダライナの注油穴から高圧で直接、リング表面に吹き付ける注油システム(高速型注油システム)を、新しく供試機関に装備した。シリンダ注油率を変化させてPM排出率の計測を行ったところ、注油率を減らすことでPM排出率が減少した。また、排出されるPMが燃料油から生成されたものか、あるいは潤滑油から生成されたものかを調べることを目的として、燃料油(A重油)、シリンダ油および採取したPM中に含まれる金属成分の分析を波長分散型蛍光X線分析法にて行った。燃料に水を混合した乳化燃料油を用いると、NOxの排出は減少したが、燃料消費率およびPM排出は増加する傾向を示した。
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