研究概要 |
国際核融合実験炉計画(ITER)のスタートを契機に、核融合エネルギー実用化が現実味を帯びてくる中で、ITERや次世代デモ炉へ向けての重要課題も明らかになりつつある。本研究が深く関わる炉内プラズマの熱・粒子制御はその中枢に位置する。稼働中の大型プラズマ実験装置ですら放電持続時間は数十秒に留まり、準定常下でのプラズマー壁相互作用(PWI)や非接触プラズマ関連物理の基礎研究はNAGDISに代表される直線型装置で行われてきた。しかし、環状磁場閉じ込め装置における、磁力線の曲率、磁場強度勾配、プラズマ対向壁と磁力線との浅い交差角などは直線型には備わっていない。本研究では、トーラス型境界領域プラズマ試験装置の高性能化、デモ炉へ向けての超高熱流プラズマ生成の展望を開くこと、また、第一壁への負荷を決めるBlobs等の非拡散的輸送過程の解明、更には非接触プラズマ形成と深く関わる非平衡放射ダイナミクスを明らかにすることにある。 まず、トーラスプラズマ生成に関してはRFジュール放電により電子密度n_e≧10^<18>m^<-3>,電子温度T_e≧10eVの高熱流大容量プラズマが得られた。また、熱陰極を用いた直流放電においてはn_e≧10^<18>m^<-3>,T^e≧10eV,T_e≒2eVの高密度トーラス周回プラズマが得られ、周回に沿って電離プラズマから再結合プラズマに移る、非接触プラズマをトーラス環境下で定常的に得られた点は重要である。一方、大気圧マイクロ波ヘリウム・ジェット放電を安定に点火する手法を見出し、空気の混入しない気密容器に導入し、著しく密度の高い超高熱流プラズマ実現への可能性を示した実績も大きい。 プラズマ揺動の統計的解析においては確率密度分布関数PDFとそのモーメントそしてウエーブレット変換を駆使して、可能な限り物理的意味のある結果が導かれるよう努めた。その結果、Blobsの速度分布関数の外向き方向へのシフトを議論することができ、トカマクプラズマにおける回転ヘリカル摂動磁場の効果を明らかにした。更に、多くのプラズマ実験装置においてマルチフラクタル特性の共通性から、長時間・長距離相関(記憶効果)がプラズマ異常輸送との関連で検討された。 共同研究者Rosmej教授の衝突輻射コードSOPHIAを用いて、複数ヘリウム発光原子線の強度比からプラズマ・パラメータを評価する際の放射捕獲の影響を明らかにすると共に、それを克服する発光線の新しい組み合わせを提案することができた。また、この際、発光線の時間変化の特性時間に関しても検討を行った。
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