研究概要 |
1.ND4/5遺伝子領域シークエンス決定のための実験手法の確立 上記領域のシークエンスがこれまで慣習的に用いられてきたrRNA遺伝子やcytb遺伝子より系統学的パフォーマンスが高いことを示した.さらに,新たなプライマーを設計し,効率の良い実験手法を確立した.この結果をIchthyological Researchに発表した(Miya et al.2006). 2.DNA分析のための標本収集 日本各地ならびにタイとカンボジアにて標本収集を行い,計70種余りのコイ目魚類を収集することができた.さらに,国内の観賞魚業者から多数の標本を購入し,世界各地のコイ目魚類を150種以上収集することができた.これらの標本を,Cypriniformes Tree of Life(CToL)プロジェクトで収集したコイ目魚類およそ150種と交換することにより,計400種余りの標本を入手することができた. 3.コイ目魚類53種を用いた系統解析 コイ目魚類大系統の大枠をとらえることを目的とした科・亜科レベルの解析をコイ目魚類53種+外群6種の計59種のミトコンドリアゲノム全長配列を用いて行った.その結果,コイ科ならびにサッカー科の単系統性が明瞭に示されるとともに,ドジョウ科とタニノボリ科は非単系統群であることが明らかになった.一方,これら科間の関係は不明瞭で,今後分類群のサンプリングの密度を高めることにより,問題の解決を図るべきであることが示唆された.この結果は,Journal of Molecular Evolutionに投稿中である(Saitoh et al.submitted). 4.ミトコンドリアゲノム全長配列決定のための新たなプロトコールの開発 ミトゲノム全周決定をより効率的に行うため,新たなコイ目魚類専用のプライマーを設計するとともに,96ウェルプレートとマルチチャンネルピペットを用いた新たなプロトコールを開発した. 5.国際的イニシアチブの確立 魚類の分子系統学で国際的なイニシアチブの確立を果たすべく,全魚類をターゲットにした研究を幅広く進めた.その成果は2005年度に計7編の論文として発表された.
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