研究概要 |
1.標本の収集とDNAアーカイフの構築 インド,ベトナム,日本各地に赴き標本採集を行うとともに,観賞魚店を通じて輸入されるものを購入することにより研究資料とした.その結果,全体で計722種のコイ目魚類が収集され,本目魚類の全亜科を網羅できた. 2.新たに確立した実験手法に基づくコイ目魚類ミトゲノム全長配列の決定 昨年度に開発しIchthyological Researchに発表した実験手法(Miya et al., 2006)に基づき,今年度新たに98種のコイ目魚類のミトゲノム全長配列を決定した. 3.コイ目魚類53種を用いた系統解析結果の論文発表 コイ目魚類の全科を網羅する53種を用いた綿密な系統解析を行い,その結果をアメリカ魚類爬虫類学会をはじめとするいくつかの学会で発表した.また,その内容をMitogenomic evolution and interrelationships of the Cypriniformes(Actinopterygii : Ostariophysi) : The first evidence towards resolution of higher-level relationships of the World's largest freshwater-fish clade based on 59 whole mitogenome sequencesと題する論文にまとめ,分子進化学の著名な国際誌に発表した(Saitoh et al., 2006, Journal of Molecular Evolution 63:826-841). 4.新たなステップへ 前記研究をさらに拡張すべく,計152種のデータ行列を構築し,今年度購入した並列計算システムを用いて現在解析を進めている.この計算システムのおかげで,ベイズ法ばかりでなくRAxMLなど最尤法を採用した解析が可能になり,この結果については来年度のアメリカ魚類爬虫類学会に発表する予定である. 5.国際的イニシアチブの確立 魚類の分子系統学で国際的なイニシアチブの確立を果たすべく,全魚類をターゲットにした研究を幅広く進めた.その成果は2006年度に計7編の論文として発表された.なかでもウェブジャーナルであるBMC Evolutionary Biology 7:10に発表したMabuchi et al.,(2007)Independent evolution of the specialized pharyngeal jaw apparatus in cichlid and labrid fishes.は大きな注目を集め,Research Highlightとして取り上げられただけでなくMost viewed articles in past 30 daysやHighly accessed paperに選ばれ,すでに1500件以上のダウンロードされた.
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