研究概要 |
1.標本の収集とDNAアーカイフの構築 前年度に引き続き標本採集を行い研究資料とした.その結果,全体で計867種のコイ目魚類が収集され,本目魚類の全亜科を網羅できた. 2.新たに確立した実験手法に基づくコイ目魚類ミトゲノム全長配列の決定 一昨年度に開発しIchthyological Researchに発表した実験手法(Miya et al. 2006)に基づき,今年度新たに123種のコイ目魚類のミトゲノム全長配列を決定した.全体では計369種のミトゲノム全長配列を決定したことになり,目標の350種を上回ることができた. 3.コイ目魚類363種を用いた系統解析結果の学会発表 現在,コイ目魚類の全科・全亜科を網羅する363種を用いた綿密な系統解析を行っている.この結果は2009年度アメリカ魚類両生爬虫類学会年会でCypriniformes Tree of Life:A mitochondrial phylogenomic approach based on 363 sequencesというタイトルで発表する.また,並行して論文執筆を進めている. 4.新たなステップへ 前記研究にさらに分岐年代情報を取り入れることにより,進化史をより詳細な分析を可能とした.その結果はInterrelationships and historical biogeography of cypriniform fishes (Actinopterygii:Ostariophysi):evidence from mitochondrial genomics dates basal divergence during lower MesozoicというタイトルでEvolution誌に投稿した.また,全長配列と部分配列を組み合わせたミトゲノム超行列を作成し,大規模解析への新たなステップを踏み出した. 5.国際的イニシアチブの確立 魚類の分子系統学で国際的なイニシアチブの確立を果たすべく,全魚類をターゲットにした研究を幅広く進めた.その成果は2008年度に計14編の論文として発表した.なかでも王立協会のジャーナルであるBiology Lettersに発表したDeep-sea mystery solved:Astonishing larval transformations and extreme sexual dimorphism unite three fish families はNature誌に1頁にわたって紹介文が掲載されたり,全米で150以上の新聞に記事が掲載されたりなど国際的に大きな反響を呼んだ.我が国でも朝日・毎日・東京新聞,日経サイエンス,日本版ナショジオ,ニュートンなどに「三つの科が一つに」というタイトルで大きく取り上げられ,科学の世界だけでなく一般に向けても多大なメッセージを発することができた.
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