研究課題
基盤研究(A)
生体膜を構成するリン脂質には炭素数や二重結合の違いにより様々な脂肪酸鎖が結合している。このような「リン脂質脂肪酸鎖の多様性と非対称性」は昔から良く知られているが、その形成機構や生理的意義はほとんど明らかになっておらず、生体膜リン脂質分野における大きな課題である。我々は、遺伝学的解析が容易な線虫C. elegansを用いて、リン脂質脂肪酸鎖の多様性・非対称性に関与すると考えられる新規脂質関連遺伝子について、網羅的に欠損変異体を作製し、その生理機能ならびに反応機構を解析を行った。主な研究成果は以下のとおりである。・細胞内型ホスホリパーゼA1の機能解析を行い、細胞内型ホスホリパーゼA1が細胞内小胞輸送系(特に逆行輸送系)を介し、上皮系細胞の非対称分裂を制御することを見出した(非対称分裂に関わるβカテニンの細胞内非対称局在を制御)。・上皮細胞に選択的に発現するホスホリパーゼPAF-AH(II)についてノックアウトマウスを用いた解析を行い、PAF-AH(II)が酸素ストレスによろて障害を受けたリン脂質を代謝し、酸化ストレス防御因子として機能することを個体レベルで示した。・線虫をモデルとした遺伝学的手法により、細胞内シグナル伝達において極めて重要な役割を持つホスファチジルイノシトール(PI)に高度不飽和脂肪酸を導入する遺伝子mboa-7を同定した。今後、mboa-7/LPIATの解析により、PIの脂肪酸鎖の構造がPIの関与する生命現象にどのように寄与するか、といった生体膜脂肪酸分子種の本質に初めて迫ることが可能となる。
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