1.TAK1 MAPKKKは、複数の細胞内伝達経路で重要な働きをしている。ストレスシグナルに注目し、TAK1が果たす役割とその制御機構の解明を目指した。酸化ストレス、紫外線ストレス、浸透圧ストレス、環境毒素のヒ素ストレス経路を検討した結果、TAK1はほとんどのストレスで活性化されるが、特に浸透圧ストレスによって強く活性化されること、TAK1の欠損によって浸透圧ストレスによるJNK MAPKの活性化が著しく減弱することを見出した。このことは、TAK1は浸透圧刺激によるJNKの活性化に重要であることを示している。さらに、TAK1の結合因子であるTAO2が、TAK1によるJNKを促進する一方で、TAK1とIKKの結合を阻害し、TAK1によるIKK-NF-κBの活性化をブロックすることを見出した。これらの結果から、TAO2はTAK1を浸透圧刺激に適切に応答するよう、JNKのみを活性化するように制御する働きをしていると考えられる。 2.初期発生においてERK/MAPKカスケードは中胚葉形成に重要な役割を果たしている。アフリカツメガエル初期胚におけるERKの活性化時間は、ネガティブフィードバックインヒビターSproutyによって制御されている。ERKの活性化状態を細胞がどのようにモニターし、細胞分化へと繋げて行くのか分子メカニズムの解明を行った。その結果、ERKの活性化によって早期に誘導される転写因子Fosが、中胚葉においてERK活性化のセンサー分子として機能していることを明らかにした。以上の結果から、中胚葉背腹軸にそったSprouty-ERK-Fosのシグナルネットワークが、中胚葉パターニングに重要であることを明らかにした。
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