研究課題
基盤研究(A)
本研究においては、脊索動物尾索類カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)における発生遺伝学的研究の展開をめざした。カタユウレイボヤは世代時間が2-3ヶ月と短く、また通年産卵することから、純遺伝学的研究手法の導入に適している。我々は、トランスポゾンの一種Minosがこのホヤにおいて活性をもち、MinosトランスポゾンをゲノムDNAに挿入したトランスジェニックラインを作製することに成功した。そこで、この技術を駆使して、できるだけ多数のカタユウレイボヤMinos挿入突然変異体の単離を行った。そして、得られた突然変異体の原因遺伝子の作用機構をマイクロアレイを用いて解析した。同時にさまざまなトランスジェニックラインを作製し、カタユウレイボヤにおける発生遺伝学の基盤を確立することもめざした。Hl7〜19年の3年間で、カタユウレイボヤの遺伝子トラップ系統50系統の作製および30系統のスクリーニングを行った。その結果、ホヤ変態期突然変異体swimming juvenile1〜4(sj1〜4),Balloon(bal),およびtail regression failed(trf)などを単離することに成功した。またこれらの変異体をマイクロアレイによって解析した。sjは幼生の尾を残したまま体幹部で変態を開始する。またtrfは変態途中で尾部を吸収せず、成体組織の成長が進行して尾部を持った幼若体の形態をとる。このことから、ホヤ変態イベントの制御には少なくとも2つの独立したパスウェイの存在が示唆される。またこの3年間にトランスジェニックラインの作製に力を入れた結果、幼生の表皮、筋肉、神経、脊索のマーカー系統として使えるもの、また成体の神経複合体、鯉、血球などのマーカーラインとして使えるものなど20ライン以上の作製に成功した。現在これらのマーカーラインを用いて、遺伝子の発現と機能の解析をさらに進めている。
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