計画研究の5年目が終了し、本特定領域研究開始時に設定した目標が達成しつつある。本特定領域の強調すべきキーワードのひとつ「系統的・網羅的視点」を実現するための基盤整備がほぼ完成した。この5年間にアフリカツメガエル(A01)に関してはXDB(version 3)、ホヤ(A01)はMAGEST、コオロギ(A03)はCricket Expression Database、ニワトリの眼についてはChicken Eye Expression Database、ヒメツリガネゴケ(A03)はPHYSCObaseなどのモデル動植物のデータベース構築などがほぼ完成し、これらの遺伝子リソースが研究者に配布されるしくみも完備され国際的なリソースの共有にも尽力している。この5年間の本特定領域研究の努力によって、系統的・網羅的研究基盤が予定通り構築されたといえる。「系統的・網羅的アプローチ」の最終目標は初期発生現象、器官形成・再生、進化という本特定がカバーするすべての領域で、これらの基盤が有効に活用され、遺伝子の機能解析、生物現象の解明に貢献することである。遺伝子情報が整備されたことによって、遺伝子の過剰発現、機能欠損などによる機能解析を、発生生物学研究に用いられる様々なモデル生物を駆使し、限られた遺伝子ではなくゲノム規模で実施することが可能となったことは、生物学に大きな変革をもたらした。計画班員小林悟らが、生殖細胞特異的に発現する遺伝子データベースを活用することによって、生殖細胞形成に関わる一群の機能遺伝子の同定し、RNAi(RNA干渉法)などによる網羅的機能解析が実現したことはその良い例である。
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