研究概要 |
平成19年度は原腸形成における細胞移動の制御と細胞極性形成に関して顕著な研究成果を得た。研究代表者の上野らは細胞移動の負の制御機構として細胞接着の正の制御因子ANR5を同定した。ANR5は細胞増殖因子FGFの標的遺伝子として同定された遺伝子のひとつで、過剰発現やモルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた機能阻害によって、ANR5はPAPCと直接結合して下流のRhoA活性を制御することによって細胞接着を正に制御することを明らかにした。また、ANR5は細胞同士が集団で運動するために必要な膜突起の形成に必要であり、それによって原腸形成に必須の役割を担っていることを明らかにした(Chung, H. A. etal., Curr. Biol.)。また、木下らは細胞増殖因子Wntが中胚葉細胞に作用し、細胞運動に必須の役割をもつパキシリンのユビキチン依存的分解を制御することによって原腸形成の細胞運動を調節していることを明らかにした(Iioka, H., et. Al., Nat Cell Biol.)。これらは細胞の集団としての移動が原腸形成に必須であることを示す重要な研究成果である。さらに、上野らは原腸形成時に見られる細胞の形態的・機能的極性化の開始機構について微小管伸長に着目した解析を行い、発生過程の脊索-体節間境界が極性開始シグナルを持っていることを明らかにした(Shindo, A., et al. PLoS ONE)。今後はこの極性開始シグナルの実体について研究を進めていきたいと考えている。
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