研究概要 |
本研究では,アフリカの鮮更新世における初期人類をも含む哺乳動物相について,古環境の変遷にともなう種分化と哺乳動物コミュニティ構造の変遷と進化様式について,実証的に論じることを目的としている。特にエチオピア産の化石資料を主要な研究対象とし,初期人類の出現期からアウストラロピテクスまでに見られる大局的な形態進化に照らし合わせ,エチオピクス猿人からボイセイ猿人の系統における特殊化について論ずる。また,コンソ遺跡群の更新世前期の哺乳動物群を主要対象群とし,約170万年前ごろの東アフリカにおこったとされている気候古環境変動に伴う哺乳動物相の進化変遷様式を調査する。本年度の研究は,以下の通り実施した。ボイセイ猿人の系統におけるマイクロウェアの観察を進め,後期ボイセイ猿人においてabrasiveな食性特徴が見られるとの結果を得た。エナメル質厚さについては,より長期進化的背景として新種の大型類人猿を発表すると同時に,磨耗耐性の数量評価法を確立し,頑丈型猿人の基礎データを整備した。下顎骨については,CTデータを新たに取得し,エチオピクス猿人と比ベボイセイ猿人では頑丈性が格段に高いとの予備的結果を得た。コンソ遺跡群産のウシ科資料についは,170万年前ごろの乾燥化前後の時代の二つの資料群の比較を進め,歯冠高,ミソウエア,マイクロウエアのデータを取得し,同位体分析用の資料を採取した。また,生態情報が得られている現生のニホンシカにおける咬耗速度に関して調査し,食性と咬耗速度に有意な相関があり,高摩耗環境においては,特に第3大臼歯の耐久性に淘汰がかかることが示唆された。 これらの結果を参考に,コンソ遺跡群のウシ科群集の進化的変遷について今後調査を進める予定である。
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