研究課題/領域番号 |
17208006
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
国見 裕久 東京農工大学, 大学院共生科学技術研究院, 教授 (50195476)
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研究分担者 |
仲井 まどか 東京農工大学, 大学院共生科学技術研究院, 助教授 (60302907)
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キーワード | チャハマキ / 雄殺し / RNAウイルス / 性比異常 / PCR診断 / cDNA / 有病率 / SMART |
研究概要 |
茶樹の重要害虫であるチャハマキの野外個体群には、性比がメスに偏る(SR)系統が存在する。性比異常形質はSR系統のメスを通じて次世代に伝達され、SR系統のオス幼虫の選択的致死(late male-killing)に起因する。チャハマキのmale-killingには、他の昆虫種で胚期のオスの選択的致死(early male-killing)の因子として同定されているWolbachiaなどの細菌類ではなく、RNAウイルスの可能性が高いことが明らかにされている。しかし、因子精製法が確立されておらず、その本体を特定するまでには至っていない。そこで、RAPD(random amplified polymorphic DNA)を用いて因子の探索を試みた。 SR系統のメス成虫腹部磨砕物を出発材料にして、ショ糖密度勾配遠心により得たバンド画分から抽出したRNAをSMART(Swiching Mechnism at 5'end of RNA Trnascript)に供試し、SR系統に特異的なRNAを探索した。その結果、SR系統に特異的な7種類のRNA配列を得ることができた。この配列をBLAST検索に供試したところ、7種類全てが新規の配列であることが明らかとなった。昨年得られたSR系統に特異的な配列A1とC3の発育に伴う量的変化を調査したところ、A1とC3の量は、雌雄とも5齢期に急激に増大した。また、3齢期及び4齢期にSR系統に特異的な病徴と徴候を示した個体では、A1とC3量は、5齢期の量とほぼ同じであった。このことから、A1とC3量の増大と致死の問には、何らかの関連があると推察された。 A1とC3に特異的なプライマーを用いたPCR診断により、チャハマキ野外個体群での有病率の変動を調査したところ、有病率は、第1世代から第4世代まで、約40%で推移した。また、新たに岐阜県のチャハマキ個体群にもSR系統が分布していることが明らかになった。SR系統終齢幼虫の組織切片を作製し、光学顕微鏡で観察したところ、SR系統の雄幼虫では、致死直前に中腸組織の崩壊が観察された。
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