研究課題
基盤研究(A)
茶樹の重要害虫であるチャハマキの野外個体群には、性比がメスに偏る(LMK)系統が存在する。性比異常形質はLMK系統のメスを通じて次世代に伝達され、LMK系統のオス幼虫の選択的致死(late male-killing)に起因する。チャハマキのmale-killingには、他の昆虫種で胚期のオスの選択的致死(earlymale-killing)の因子として同定されているWolbachiaなどの細菌類ではなく、RNAウイルスの可能性が高いことが明らかにされている。しかし、因子精製法が確立されておらず、その本体を特定するまでには至っていない。そこで、本研究では、オス殺しウイルスの性状解析とその殺虫機構の解明を目的とした。LMK系統雄幼虫の病徴を観察したところ、LMK系統オス幼虫は、致死の4〜5日前に体色の白色化が認められ、致死直前には、内部の脂肪組織が全く認められなくなった。LMK系統に雌雄幼虫の病理組織学的な観察を行ったところ、LMK系統オス幼虫では、脂肪組織の腫瘍化が観察され、さらに、死亡直前には中腸組織の崩壊が観察された。脂肪組織の腫瘍化および中腸組織の崩壊とmale-killing因子であるRNAウイルスの増殖量との関連を調査するため、RNAウイルスに特異的な配列であるMK1069とMK1241の両組織での量的変動をリアルタイムPCRにより調査したところ、病徴・徴候の進展とMK1069とMK1241の増殖量との間には正の相関が認められた。このことから、脂肪組織の腫瘍化および中腸組織の崩壊は、因子の増殖によって引き起こされていることが推察された。オス殺しウイルスをしょ糖密度勾配超遠心分離により精製したところ、直径10〜15nmの不定形の粒子が観察された。特異的なプライマーを用いたPCR診断により、チャハマキ野外個体群でのオス殺しウイルスの分布を調査したところ、新たに、埼玉県、静岡県、岐阜県、宮崎県で採集したチャハマキから、オス殺しウイルスが検出された。これらのことから、オス殺しウイルスは、全国のチャハマキ個体群で広く分布していることが推察された。
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