研究概要 |
新規抗幼若ホルモン活性物質の合成探索と構造-活性相関解析より、最も強い活性を示すethyl 4-(2-benzylhexyloxy)benzoate (1)を見いだしたので、化合物(1)とその類縁体の光学活性体を合成し、構造と活性の関係を検討した。Evansの不斉アルキル化法により、光学活性なアルコールを合成し、目的化合物を98%ee以上の光学純度で得た。(S)-オキサゾリジノンを使用した場合、 R体のアルコールが生成した。生物検定は、カイコ3齢幼虫の胸部背面に供試化合物のアセトン溶液を局所施用し、4齢期にJH欠乏により誘導される早熟蛹化の有無によって評価した。アルキル鎖がブチル(1)やペンチル基の場合、S体は低薬量で活性が強く、高薬量では逆に活性は低下した。一方、R体は低薬量で活性は弱く、薬量依存的に活性が上層する傾向を示した。S体を5齢幼虫に処理した場合、蛹化が阻害されたことから、S体にはJH作用があることが示唆された。また、4-(2-benzylhexyloxy)benzoic acid (1-acid)は局所施用ならびに摂食法で早熟変態誘導活性を示さなかったことから、エステルである化合物(1)が活性本体であると推測された。 JH作用点と思われる化合物(1)の標的分子の同定・単離を行うために、化合物(1)の部分構造をリガンドとしたアフィニティクロマトグラフ用担体を作製した。 JH生合成の鍵酵素の一つであるJH酸メチル基転移酵素(JHAMT)の特異的阻害剤のスクリーニングを、大腸菌で大量調整したカイコのJHAMTを使用して行った。カイコに対して早熟変態を誘導する1,5-二置換イミダゾール類や3-ピリジン化合物には阻害活性は認められなかった。抗JH作用を有する化合物(1)やその誘導体はJHAMTを全く阻害しなかったが、化合物(1-acid)がS体、R体いずれも0.1mMでJHAMTの活性を80%以上阻害することを見いだした。
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