研究概要 |
Ca^<2+>による細胞周期G2期制御機構の全貌および生理的意義を解明するため、この経路の機能に欠陥を有する変異株を多数取得し、順次解析を進めている。本年度はおもにscz13およびscz6の解析を行った。また、多コピーベクターにより遺伝子を高発現することによって上記経路に負に作用する制御因子のスクリーニングを進めており、このスクリーニングで取得した遺伝子を詳細に解析した。得られた成果は次の通り。 1)Ca^<2+>シグナルによる細胞周期制御における、タンパク質N-グリコシレーション反応の関与: scz13変異株の解析から、原因遺伝子はER内腔におけるN-グリコシレーション反応の初期段階に関与する酵素α-1,2-マンノシルトランスフェラーゼの遺伝子ALG9における変異であった。ALG9欠損は、Ca^<2+>によるΔzds1株の芽の異常極性成長を効果的に抑圧し、芽の伸長速度が遅れた。ALG9欠損は、ポラリソームの因子Spa2p局在の変動に影響することが明らかになった。 2)Ca^<2+>シグナルによる細胞周期制御におけるYAP1の作用機構: 出芽酵母の酸化ストレス応答における主要転写因子として知られるYap1pをコードする遺伝子YAP1が取得された。YAP1は高発現によりCa^<2+>の効果(Ca^<2+>感受性)を抑圧し、反対に破壊することによりCa^<2+>の効果を増強することが明らかになった。Yap1pはカルシニューリン依存的に分解された。Ca^<2+>によるYap1p分解を介してプロテアソーム活性が低下した。Swe1p(Cdc28pのインヒビター)およびサイクリンCln2pは、細胞周期を通じ(G2/M期)プロテアソームによる分解を受けるが、分解系の活性低下により、これらタンパク質が蓄積し、Ca^<2+>感受性の抑圧につながったことが明らかになった。 本系を利用する薬剤スクリーニングに関しても、生薬等のスクリーニングを行い、順調に成果を得ているので、これについては、次年度で報告する。
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