研究課題
CO_2付加実験の成果を基礎に研究を進めている。葉面積指数(LAI)の季節・年変化を見ると、CO_2付加初年度は両土壌ともに高CO_2処理の影響は小さかったが、付加3年目になると7月からLAIの低下が高CO_2環境で顕著であった。葉量が最大になった8月に垂直方向のLAIを30cm間隔で測定したところ、高CO_2ではOikawa(1986)の予測通り、樹冠上層部でのLAIが大きかった。このため下層は日陰になり、被陰された葉が早期落葉した事も8月以降のLAIの値が低下した原因と考えられる。この傾向は、先行するDuke大学でも報告されている。上層木ではあまり見られなかった食害も下層では7月にも見られた。落葉は相互被陰によるものだけでなく、広葉樹の被食防衛物質は炭素余剰の環境で多く生産されるが、被陰下では光合成生産も活発ではなく被食防衛能力が低下していたと考えられる。2004と05年の夏以降、火山灰土壌のLAIの急激な低下の理由は、カバノキ科樹木を食するハンノキハムシの食害の結果であった。一般に貧栄養条件では被食防衛物質が増加し、この傾向は高CO_2では促進された。激害であったケヤマハンノキの光合成活性が高CO_2で促進され、光合成産物が多く転流され、共生する窒素固定菌フランキアの活性が上昇し、ケヤマハンノキ葉の栄養条件を良くしたため食害が増加した。生育環境での光合成速度の測定結果、褐色森林土では高CO_2処理の影響は見られなかった。火山灰土壌では、ケヤマハンノキを除いて高CO_2処理の影響は見られなかったが、ケヤマハンノキは高CO_2によって増加した。成長量は褐色森林土では高CO_2処理によって増加した。火山灰土壌ではケヤマハンノキを除いて両年ともに高CO_2処理の影響は見られなかったが、ケヤマハンノキのみは高CO_2処理によって成長増加した。現在、世界のCO_2付加実験との比較のため精査中である。
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