研究分担者 |
今井 貴規 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (20252281)
竹村 彰夫 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (50183455)
山本 浩之 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50210555)
横山 朝哉 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (10359573)
吉田 正人 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (30242845)
|
研究概要 |
重力環境に対応してリグニン化学構造がどう変わるかを追及する上で,草本類と木本類のリグニン構造及びリグニン量の根本的な相違を追求することは大変重要である。クラーソン法によるリグニン定量値は樹木については非常に信頼性が高い。しかし,よく知られているように,草本類においても,樹本同様に高い値が得られる。草本において得られる高い値が果たして本当のリグニン量を示しているかどうかについては,未解明のまま残されていた。この点を明らかにするために,赤外分光法によって試料中の芳香核量を推定することを試みた。その結果,草本類や葉においては,クラーソン法によって非常に高いリグニン量が与えられたとしても,芳香核量は非常に少ない,すなわち,リグニン量は低い,と言うことが明らかになった。一方,草本類でも,ある程度しっかりとした組織を有する試料では,芳香核量が多い,つまりリグニン量が多いと言うことも明らかになった。これにより,植物が重力に抗して成長する際には,草本,木本を問わず,組織中にある一定量のリグニンを必要とすることが示唆された。化学構造については,樹木リグニンについてすでに我々が見出している芳香核構造と側鎖構造の間の一定の明確な関連が,草本類においても見出されることがわかった。 細胞壁を完全に溶解する溶媒系が見出されれば,種々のスペクトル分析が可能になるため,上記の点を含めた細胞壁構成成分のin situの化学分析に大きく寄与する。この観点に立って,溶媒系の検討を行った結果,DMSO-LiClと言う溶媒系に,樹本二次木部を含む植物細胞壁が完全に溶解することを見出した。この溶媒系は,従来提案されている溶媒系と比較して,はるかに,構成成分の化学的変質が小さいため,今後,細胞壁にあるがままの状態でのリグニン構造分析が飛躍的に進歩すると期待される。
|