研究課題/領域番号 |
17208019
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
中村 將 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (10101734)
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研究分担者 |
小林 亨 水産総合研究センター, 養殖研究所, 主任研究員 (30221972)
平井 俊朗 帝京科学大学, 理工学部, 講師 (30238331)
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キーワード | 性分化 / 性決定 / 性転換 / 雌性ホルモン / 雄性ホルモン / アロマターゼ / ステイロイド代謝酵素 / 生殖細胞 |
研究概要 |
ティラピアの卵黄蓄積開始前の卵巣をもつ雌個体(体長40mm)を用いて、アロマターゼによる性転換精巣分化を誘起し、精巣分化開始領域の同定をDMRT1の発現を指標として調べた。形態学的に精巣領域が分化する前に、卵巣全体で、DMRT1陽性細胞の局在を調べた結果、最初に生殖腺の中〜後端部の卵巣薄板において、DMRT1陽性細胞の出現がみられた。また、この時期の同領域では、生殖原細胞の存在が、対照群と比べて明瞭に認められた。これらの結果は、卵巣が成熟期に達する以前に既に性転換精巣分化開始領域が特定の部位に限定されていることを強く示唆する。 コイ全雌群を用いて性分化後の性的可塑性について調べた。孵化後12ヶ月からアロマターゼ阻害剤を継続的に経口投与したところ、投与開始8週目で精母細胞を含む包嚢、ならびに精巣特有のlobule様構造の形成が確認されるようになった。16週目には一部の個体で生殖腺の一部に精子が確認され、18週目には生殖腺全域で精子が確認される個体も出現した。この事から、ティラピアと同様にコイにおいても性分化後の雌生殖腺に性的可塑性が保持されていることが明らかとなった。 クマノミの生殖腺は始め卵巣が分化し、その後、卵巣中に精巣組織が分化して両性生殖腺を持つようになる。性分化と性ホルモンの関係を明らかにするために、アロマターゼ阻害剤(AI)、雌性タモキシフェン(TF)を性分化期に投与して影響を調べた。対照群の生殖腺は、卵巣組織よりなり、精巣が全く見られなかったが、AI,TF処理群の生殖腺は、卵巣組織中に精子形成が進行する精巣組織が見られた。このことから、雌性ホルモンは卵巣分化に直接働いている可能性が少ないが、卵巣中に精巣が分化する機構には雌性ホルモンの低下が必要であるものと考えられた。
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