研究概要 |
ミオスタチン(Myostatin)は骨格筋形成を負に制御する。1998年、岩手県でミオスタチン遺伝子変異によるDM形質を有する日本短角種DM牛が発見された。日本短角種DM牛は通常牛の約1.5倍の赤肉産肉量を誇り、極めて優れた産肉能力を持つ。このように、牛の赤肉量をミオスタチンが制御することは明らかであるが、DM牛のミオスタチン欠損による筋肥大メカニズムは未だ明らかにされていない。本研究では、ミオスタチンの産肉調節作用の全容を解明することにより、DM形質の誘発機構を明らかにし、肉用牛の産肉性の向上に資することを目的とする。研究は、日本短角種DM牛と通常牛を使用して、ミオスタチンの筋肉肥大に対する作用、ミオスタチンの発現・作用機序、ミオスタチン機能抑制因子、ミオスタチンリセプターの発現機序、ミオスタチンのGH軸に対する作用と脂肪蓄積に対する作用を解明する。初年度は研究計画に従い下記の研究事項を行った。 (1)筋肥大機構に対するミオスタチン作用の解明 1)日本短角種牛由来の筋芽細胞において、HGF, aFGF, IGF-1, GHによるミオスタチンmRNAを検討し、HGFとGHがミオスタチンの発現を抑制することを明らかにした。 2)DM牛と通常牛の骨格筋において、骨格筋の転写因子、Myf5、MyoD、myogeninとMRF4の解析し、MyoD、myogeninとの発現がDM牛で高いことが証明された。 3)DM牛と通常牛の骨格筋由来筋芽細胞において、ミオスタチン受容体が発現することが示され、ミオスタチンが速筋型ミオシン重鎖発現を抑制することが明らかにされた。 (2)脂肪蓄積に対するミオスタチン作用の解明 1)血中の脂肪酸組成はDM牛の通常牛との間で相違は認められなかった。 2)ウシ筋肉内脂肪前駆細胞株(BIP細胞)において、ミオスタチン受容体が発現することが確認された。 (3)ミオスタチンのGH軸に対する作用解明 1)日本短角種DM牛において、血中のGH、IGF-1、グレリン、インスリン濃度を解析し、IGF-1が通常牛より低く、GHの加齢に伴う減少が多きことが示された。
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