研究課題/領域番号 |
17208030
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
岩田 久人 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (10271652)
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研究分担者 |
田辺 信介 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (60116952)
金 恩英 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 客員准教授 (70419513)
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キーワード | 核内レセプター / CAR / 難分解性有機汚染物質 / 水圏生物 / シグナル伝達 / PCB / DDT / リスク評価 |
研究概要 |
今年度は前年度構築したin vitro CARレポーター遺伝子アッセイ系を用いて、バイカルアザラシとマウスCARのリガンドプロファイルを比較した。 バイカルアザラシCARは代表的な有機塩素化合物である各PCB同族・異性体(PCB99、101、105、118、138、153、156、180、187)やDDT化合物(p、p'-DDT、p、p'-DDE)、 trans-nonachlorによって活性化されることがわかった。さらに近年環境汚染が問題となっている有機臭素系難燃剤についても調査したところ、バイカルアザラシCARはヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)によって活性化されたが、ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)の一部の異性体では若干活性が抑制された。 バイカルアザラシで得られた結果をマウスCARの結果と比較したところ、オルソ位に塩素が2個以上置換したPCB異性体で処理することにより、バイカルアザラシCARはマウスCARよりも敏感に応答する傾向が伺え、バイカルアザラシはPCB暴露に対してマウスより高感受性であると考えられた。 本研究の結果より、バイカルアザラシCARとマウスCARのリガンド選択性や応答性には明確な種差があり、このことはCARリガンド結合ドメインにおけるアミノ酸配列の相同性が相対的に低いことに起因していると考えられた。また実験動物で得られたCAR標的遺伝子転写活性化能に関する結果は、水棲哺乳類などの野生生物に単純に外挿できないことが示唆された。つまりCARの機能特性の解明が有機塩素化合物や有機臭素系難燃剤に対する生物種固有のリスクや影響を評価するために重要であると考えられた。
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