研究課題
本年度は以下のような研究を行った。1.小脳皮質における可塑性に与える海馬の影響を調べることを目的として、まず、海馬から小脳への入力をラット麻酔標本において検討した。Wistarラットをウレタン麻酔し、海馬を電気刺激したところ、瞬目反射学習に関わる小脳半球部の脳表より誘発電位が記録された。現在、この誘発電位が小脳の自発活動(麻酔下)に与える影響を検討している。2.学習中の脳のin vivoイメージング法の検討を行うことを目標として、浜松ホトニクス社の高感度冷却CCDカメラを購入し、マウスの脳における内因性蛍光(フラビン)の測定が可能であるかどうか検討した。麻酔下のマウスの大脳皮質視覚野において、視覚刺激時に一過性の蛍光上昇が記録されたことから、本測定法がin vivoイメージング法として有効であることが確かめられた。3.学習関連遺伝子の発現変化を網羅的に調べるために、条件付けたマウスの脳を取り出して凍結保存した。現在、DNAマイクロアレイによる解析を行っている。4.ラット前頭前野の可塑性が長期記憶の形成に果たす役割を明らかにするために、記憶獲得後のラットの前頭前野に浸透圧ポンプを用いてNMDA受容体アンタゴニストであるAPVを注入し、6週間後の記憶の保持を調べた。獲得直後から2週間APVを投与した場合には長期記憶の形成が顕著に障害されたが、記憶獲得2週間後から4週間後までAPVを投与した場合には長期記憶の形成は障害されなかった。このことは、記憶獲得直後の2週間における前頭前野におけるNMDA受容体依存的なシナプス可塑性が長期記憶形成に重要な役割を果たす可能性を示唆している。本結果により、獲得後直後2週間の内側前頭前野の遺伝子発現変化を調べることの重要性が示唆された。
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