研究課題
1. MAPキナーゼキナーゼの一種であるMEK1のドミナントネガティブ体(dnMEK1)を、小脳プルキンエ細胞に発現させたマウスに瞬目反射条件づけを行ったところ、学習が阻害された。この結果はプルキンエ細胞内MEK-ERKカスケードが運動学習に必須であることを示し、小脳学習でのMEKの生理機能が初めて明らかになった。2. GABA合成酵素の一種であるGAD67の発現が抑制されたマウスに瞬目反射条件づけを行ったところ、学習が阻害された。この結果は小脳における正常な抑制性シナプスの発達が運動学習に重要であることを示し、記憶の分子基盤においてシナプス機能とその発達を結び付ける結果として興味深い。3. 瞬目反射条件づけにおいて小脳依存性が高いDBA/2マウスと野生型C57BL/6マウスを頭部固定下で学習させた。DBA/2は遅延課題は学習したが、上位中枢依存性が高いトレース課題では顕著な学習障害を示した。一方、C57BL/6は両課題とも学習した。以上より、頭部固定条件下で行う光学測定では、小脳解析にはDBA/2を、海馬を含む上位中枢解析にはC57BL/6を用いると良いことが示唆された。4. 文脈依存的瞬目反射弁別課題における海馬シータ波成分は、弁別の手がかりとなる光刺激の開始とともに増加することが多いが、シータ波成分が高い場合には音刺激のみで条件応答を出す(記憶の発現)ことがわかった。また、聴覚野で光刺激に応答して自発発火頻度が変化するニューロンが見つかった。これらの結果は、上記課題において記憶の発現に海馬と聴覚野が関与することを示唆する。5. 老化促進マウスSAMP8(10週令)は瞬目反射条件づけに障害が見られるが、聴性脳幹反応はC57BL/6(9週令)と差はなかった。この結果から、SAMP8は瞬目反射条件づけに関わる小脳や海馬機能の解明に有効であることが改めて示された。
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