細胞は正常時には膨張や縮小を強いられたとしても元の容積に戻るという容積調節能を持っている。しかし、アポトーシス時においては細胞は丸ごと次第に縮小化(Apoptotic Volume Decrease:AVD)し、ネクローシス時においては反対に次第に膨張化(Necrotic Volume Increase:NVI)して死んで行く。これまでの研究によってKB癌細胞の抗癌剤シスプラチンによるアポトーシス誘導時にVSORアニオンチャネル活性化が重要な役割を果たし、この抗癌剤に対して耐性を示すようになった亜種KB細胞においてはVSOR機能が欠失していることを明らかにしてきた。そこで本年度は、VSORアニオンチャネルとパラレルに開いてKClを流出させてAVDを実現させるK^+チャネルを同定することを試みた。その結果、Ca^<2+>依存性K^+チャネルであるIK1がそれであり、シスプラチン耐性癌細胞ではこのIK1もまた欠失していることを明らかにした。次に心筋細胞の虚血性ネクローシスにおけるCFTRの役割を解明することを試みた。その結果、マウス心臓のin vivo虚血・再灌流によって発生する心筋梗塞はCFTR活性化剤投与によって軽減され、逆にCFTR阻害剤投与によって増悪されること、そしてCFTRノックアウト(KO)マウスにおいては心筋梗塞のサイズがワイルドタイプ(WT)マウスに比べて著しく増加することを明らかにした。これまで4年間の本研究によって細胞死の誘導/防御へのチャネルメカニズムを明らかにすることができ、その成果のサマリーを英文総説にまとめた。
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