研究課題
成体の各臓器には幹細胞が存在し、修復・再生に重要な役割を担うと考えられるが、その実体や維持機構には不明の点が多い。我々は、bHLH因子Hes1/3/5が胎児の種々の幹細胞の維持に関わることを示してきた。しかし、成体においてもこれらの因子が幹細胞の維持に関わっているのか、成体の幹細胞が維持されないとどのような障害が起こるのかという問題点についてはよくわかっていない。本研究では、Hes1をコンディショナルにノックアウトすることによって、成体幹細胞の維持機構およびその生理的役割を解析する。また、Hes3-Hes5ダブルノックアウトマウスではHes1による機能代償のために顕著な異常は見られないが、さらにHes1をコンディショナルに欠損したときに起こる異常も解析する。以上の研究から、成体幹細胞システムの維持機構および生理的機能を明らかにする。今年度は以下の実験を行った。(1)成体脳の幹細胞システムの解析成体脳におけるHes1の役割を明らかにするため、Hes1-floxedマウスおよびHes1-floxed:Hes3-null:Hes5-nullマウスを作製した。また、tamoxifenによって神経幹細胞特異的にcre活性が誘導されるnestin-creERT2トランスジェニックマウスを作製した。さらに、これらのマウスを掛け合わせし、tamoxifenを投与することによって神経幹細胞特異的にHes1をノックアウトしたマウスを作製した。今後、脳の異常について組織学的に解析する予定である。(2)成体消化器における幹細胞システム成体消化器系幹細胞システムにおけるHes1の役割を明らかにするために、新たにcyp1A1-creマウスを作製した。さらに、このマウスおよびvillin-creERマウスと上記のfloxedマウスを掛け合わせして消化管特異的なHesコンディショナル・ノックアウトマウスを作製した。今後、消化器系の異常について組織学的に解析する予定である。
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