研究概要 |
タンパク質をコードするmRNAの品質監視機構(mRNAサーベイランス)(NMD, nonsense-mediated mRNA decay)で予想されていた仮想的なmRNAサーベイランス複合体の分子的な実態を明らかとすると同時に、その成果に基づいて、遺伝性疾患の症状回復の可能性を提示した。(REVIEW : Yamashitaら,Biochem.Biophys.Acta, 2005)(REVIEW : In Nonsense-Mediated mRNA decay. Landes Bioscience, 2005) 具体的には、SMG-1によるUPF1のリン酸化は、スプライシングを受けたmRNA上でリボソームがナンセンスコドンを認識した時に起きる。これに先立ち、SMG-1、翻訳終結因子、UPF1を含むSURF複合体が一過的に形成される。(Kashimaら,Genes & Development, 2006)SURF複合体がEJC (exon junctional complex)と相互作用することにより新たなDECID複合体が形成され、DECID複合体上で、SMG-1によるUPF1のリン酸化が起きる。これがリン酸化を誘導することが、ナンセンスmRNAの認識の分子機構であった。「サーベイランス複合体」の実体は、SURF複合体の形成からEJCとの相互作用の結果生じたDECID複合体への変化とさらなる複合体へのリモデリングであることが明らかとなった。(Kashimaら,Genes & Development, 2006) さらに、mRNAサーベイランス系の阻害技術を初めて実現し、これが遺伝性疾患の症状にどのような影響を与えるのかを細胞レベルで解析した。そして、mRNAサーベイランス系が疾患症状に大きく影響していることを証明した。さらに、mRNAサーベイランス系の操作により、疾患症状の回復の可能性があることを見いだした。(Usukiら,Annals of Neurology, 2004)(Usukiら,Molecular Therapy, 2006)
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