研究課題
本年度は疾患遺伝子解析において、30-50万SNPを解析するゲノム全域アソシエーション・スタディにより疾患遺伝子同定の報告が相次いだ。疾患遺伝子同定にはもっとも確実な手法と考えられたので、後縦靱帯骨化症(OPLL)においてもゲノム全域解析を試みた。Affymetrix 5.0による解析の準備を進め、研究費の半分近くを用い70例ほどチップ解析したところである。対照は、東京大学医学部人類遺伝学の徳永研のデータベースを用いる。現時点ではゲノムレベルでの有意差(P=10^<-7>)を満たすSNPは同定できていない。最低限の結論を得る為には患者検体200例を必要とし、来年度以降も研究を継続する必要がある。OPLLは多因子疾患で、遺伝要因のみで病態を形成するわけでなく、OPLLを理解するためには多面的なアプローチが求められる。OPLLでは後縦靱帯そのものもしくは他の靭帯細胞を外科的に得ることができ、患者の組織での遺伝子発現レベル変化を調べることが可能である。OPLL患者由来靭帯細胞を得ることにより骨分化の程度、mRNA発現、実験手法による遺伝子機能解析などをおこなうことができる。今回、細胞の遺伝子発現を網羅的に検出する手法、マイクロアレイ法により包括的遺伝子発現、ひいては病態の全体像を明らかにすることを試みた。OPLL患者の後棘間靭帯を用いる。OPLL由来細胞において骨化誘導に伴い変化する遺伝子群を検討した。対照と比較して2倍以上の遺伝子発現差を示しかつ統計的に有意差を認めた遺伝子を選択した。OPLLで骨分化とともに顕著に発現上昇を認めた遺伝子の中で、転写因子promyelotic leukemiazinc finger(PLZF)とそのホモログであるEAZFを同定できた。骨分化メディウムであるOSによりPLZFは誘導され、FAZFはBMP-2で誘導され、異なる役割分担を有する事が示された。PLZFは骨分化のマスター遺伝子であるCBFA1の上流に存在することを明らかにでき、FAZFもまたBMP-2誘導性骨代謝に関連していることも示すことができた。
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