研究概要 |
予備的実験により作製した活性化RAPL変異体を用いてyeast two-hybrid法にてsterile20-like kinaseファミリに属するセリン・スレオニンキナーゼ(STKと呼ぶ)が同定された。STKはRAPLに結合し、活性化Rap1(Rap1V12)によって会合が上昇する。またRap1V12とRAPLによってリン酸化やキナーゼ活性の上昇がみられた。STKはリンパ球に発現し、TCRやケモカインCCL21刺激によってリン酸化が誘導される。しかし、RAPL欠損リンパ球ではSTKのリン酸化がほとんど見られなかった。リンパ球においてSTKは細胞質とくに核周辺領域に局在しており、RAPLの分布とほぼ一致していた。ケモカイン刺激によってリンパ球はラッフル膜を持つ先端とuropodを持つ後端を生じるが、RAPLとSTKは先端膜に移行し、共局在した。またこの分布はLFA-1とも一致した。一方、RAPL欠損リンパ球ではSTKの分布が細胞質から核にdiffuseに広がっていた。マウスproB細胞株BAF細胞や3A9T cell hybridomaにSTKを過剰発現させると、LFA-1によるICAM-1接着が亢進するが、キナーゼ欠損変異体では効果が見られず、むしろRap1V12による接着上昇を阻害した。以上の結果からSTKはRAPLによるインテグリン接着制御に重要な分子と考えられた。RAPL,STK,LFA-1の細胞内の移動機構を小胞輸送や細胞骨格との関連に注目し、その作用機序を今後明らかにする。(2)RAPL欠損TCR-Tg(H-Y, OT-I)マウスやCre-loxPによるT細胞特異的RAPL-Tgマウスが樹立できた。Lck-Cre Tgマウスとの交配によってT細胞系列に発現され、胸腺細胞の選択に与える影響を現在解析中である。ANDやOT-IIマウスとの交配も進めている。18年度にRAPL欠損と過剰発現によるT細胞分化と機能変化を明らかにする予定である。
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