研究概要 |
1)ヒトに用いる癌化学予防剤の選択基準の確立に関する研究計画 今までに、発癌プロモーターであるTPAがp18発現を抑制し、クルクミンとゲニスティンがこの抑制効果を阻害することを見出していた。さらに、TPAによるp18発現抑制効果を阻害する食品由来成分を探索し、植物に含まれる成分を3種類見出した。また、TPAによるp18発現抑制機構を解析し、細胞内シグナル伝達に関わるチロシンキナーゼが関与していることを明らかにした。今回見出した薬剤はp18発現が低下して生じる癌の予防剤として使用できるという可能性が示唆された。 2)発癌家系であるリ・フラウメニ症候群に対するテーラーメイド予防に関する研究計画 リ・フラウメニ症候群はp53遺伝子が失活しており、その機能を回復させるためにp53下流遺伝子の一つであるDR5遺伝子の発現を増加させる薬剤の探索を行った。野菜や果物に含まれ発癌予防効果を有するフラボノイドであるルテオリンとアピゲニンがDR5発現を増加することを見出した(Oncogene, Mol Cancer Ther, Horinaka M.et al.)。DR5のリガンドTRAILは癌細胞特異的にアポトーシスを誘導し、発癌抑制作用を持つ。ルテオリンおよびアピゲニンとTRAILの併用は癌細胞に強力にアポトーシスを誘導したが、正常細胞にはほとんど影響を及ぼさなかった。これらの結果から、フラボノイドとTRAILの併用はリ・フラウメニ症候群に対するテーラーメイド予防に効果的である可能性が示唆された。また、ブロッコリーに含まれるスルフォラファンやERストレス誘導剤であるツニカマイシンにも同様の効果があることを見出した(Carcinogenesis, Matsui T.et al. Cancer Res, Shiraishi T.et al.)。
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