研究課題
昨年度までにhypoxia inducible factor(HIF)prolineと競合し、prolyl hydroxylase(PHD)を阻害する新規化合物を取得し、さらには動物モデルでの薬効評価を終え、HIFの活性増強を証明できた。これらの検討過程において、HIF活性化化合物の1部がHIF分解に重要なPHD中の鉄結合サイトとの相互作用を示唆する知見も得られている。本年度は、既に結晶化されX線解析が決定されているPHDの立体構造に基づいて、化合物のPHD上への結合部位と結合様式のシミュレーションを化合物探索ソフト「Ph4Dock」を用いて行った。候補化合物26個のうち、購入可能であった12種をHRE-LUCを導入した細胞系を用いたvitro評価(HIF活性化合物スクリーニング)をした。結果、既に得られている2化合物の活性を上まわるものは得られなかった。一方で、昨年取得したTM6008の腎保護作用を糸球体腎炎モデル(Thy-1腎炎)、腎尿細管間質障害モデル(Angiotensin II infusion)で評価した。これらモデルでの有用性を示す事はできなかったが、脳虚血モデルでは脳保護作用を確認できた。また、肥満、高血圧、高血糖、高脂血症、高度タンパク尿を呈する2型糖尿病性腎症ラットモデルに対し、26週間に渡る長期のコバルト投与を行い、chronic hypoxiaの改善と腎保護の関係について検討を行い、コバルトは肥満、血圧、血糖、脂質に影響を及ぼすことなく、タンパク尿、糸球体障害、尿細管間質障害の改善をもたらした。腎保護作用の機序の一環として、腎臓中の酸化ストレス(NADPH oxidase mRNA)、ペントシジン、TGF-_(mRNA)の抑制が確認され、またエリスロポエチン、VEGFの上昇も確認された。これら結果は、糖尿病性腎症におけるHIF-1_活性化による腎機能保護効果を示す初めての知見である。
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