研究課題
基盤研究(A)
我々は、虚血に対する治療薬ターゲットとしてhypoxia inducible factor(HIF)を考えている。本研究では、HIF活性を安定化する事を目的に、HIF分解に関わるprolyl hydroxylase(PHD)の活性を阻害する薬剤の探索、その作用機序の解明、さらには動物モデルでの評価を行う。HRE-LUCを導入した細胞系を用いてvitroで化合物ライブラリーをスクリーニングした結果、HIFを活性化する2つのヒット化合物(TM6008,TM6010)を得ていた。これら化合物の構造最適化により、新たに1化合物(TM6089)を見出した。Structure based drug design(SBDD)解析により、これらHIFを活性化する化合物は全てPHDのHIF proline結合部分に挿入されることが分かった。実際にVitro解析でも検証できた。これら化合物の薬物動態試験と毒性試験を実施し、TM6008とTM6089の2つに絞り込み、局所における血管新生およびヘモグロビン含有量の増加を確認した。また、HIF-HREトランスジェニックラットを用いて、多臓器(腎臓、肝臓、心臓など)でHIFの活性を増強することが示せた。TM6008をThy-1腎炎、腎尿細管間質障害モデルで評価したが、組織濃度が充分に達しなかったためか、これらモデルでは確認できなかった。一方、hypoxiaが病態に深く関与している脳梗塞に関しては、transient middle cerebral artery occlusionモデルで確実な脳保護作用を確認した。さらに、Hypoxia改善の治療学的意義を明らかにするため、2型糖尿病性腎症ラットモデルに対し、PHD阻害能を有するCO投与を行いchronic hypoxiaの改善と腎保護を検討した。COは肥満、血圧、血糖、脂質に影響を及ぼすことなく、蛋白尿、組織障害を改善した。腎保護作用の機序の一環として、酸化ストレス(NADPH oxidase)、Advanced glycation end Products(AGEs)、TGF-betaの抑制、HIF下流遺伝子のエリスロポエチン、VEGFの上昇を確認した。これら結果は、糖尿病性腎症におけるHIF活性化による腎保護効果を支持する知見である。以上、HIF prolineと競合しPHDを阻害する化合物する新規化合物を取得し、その作用機序の解明、さらには動物モデルでの評価を予定通り終了した。
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