研究課題
球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は成人発症の運動ニューロン疾患であり、アンドロゲン受容体遺伝子におけるCAG繰り返し配列の異常延長を原因とする。SBMAの病因タンパク質であるアンドロゲン受容体(AR)はHsp90や他の分子シャペロンとともに複合体を形成しているが、Hsp90阻害剤はAR-Hsp90複合体の構造変化をもたらし、ARのユビキチン・プロテアゾーム系による分解を促進させることが知られている。今回我々は、SBMAの病態を抑止する低分子化合物としてHsp90阻害剤である17-AAG(17-allylamino geldan amycin)に注目し、SBMA培養細胞およびマウスモデルにてその薬理作用を検討した。培養細胞モデルでは、17-AAG投与により濃度依存性にARの蛋白量減少効果を認めたが、その減少効果はAR-97Qでより強く認められた。17-AAGによるAR減少効果は、プロテアソーム阻害剤であるMG132併用により相殺された。Pulse chase法により蛋白質の半減期を測定したところ、AR-97QのほうがAR-24Qより速く分解される傾向が認められた。AR-Hsp90複合体の構成を検討したところ、AR-97QはAR-24Qに比較してp23と結合した複合体を形成しやすい傾向が認められた。17-AAGを投与するとAR-Hsp90複合体からp23が解離し、ARがより分解を受けやすくなることが示唆された。マウスモデルでは17-AAG投与により筋萎縮、歩行運動能などの有意な改善が認められ、1C2抗体を用いた免疫染色にて病理学的検索を行ったところ、脊髄などにおける変異ARの核内集積が有意に減少していた。マウスモデルにおいても17-AAGは変異型ARをより選択的に分解した。以上の結果から、17-AAGはAR-Hsp90複合体からp23を離脱させるとこによりユビキチン-プロテアソーム系による変異ARの分解を促進し、神経変性を抑制することが示された。17-AAGはSBMAに対する多剤併用療法の一角を担う極めて有望な薬剤と考えられる。
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