研究分担者 |
藤林 康久 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50165411)
岡沢 秀彦 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 助教授 (50360813)
木村 浩彦 福井大学, 医学部, 助教授 (10242596)
土田 龍郎 福井大学, 医学部附属病院, 助手 (70303386)
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研究概要 |
生活習慣の変化と高齢社会の到来によって,虚血性脳血管障害の早期診断,早期治療,その予防法の開発が重要な社会的問題になりつつある。画像診断法の普及により,虚血性脳血管障害の診断に寄与するとともに,脳主幹動脈の狭窄性病変に対する血行再建術の見直しがなされるなど,治療方針の決定に向けた機能診断法の開発が重要な課題になっている。本研究では,磁気共鳴画像(MRI),ポジトロン断層撮影(PET),シングルフォトン断層撮影(SPECT)などの非侵襲的脳機能画像を用い、脳機能診断としての役割を明らかにする。昨年度まで継続してきた研究では,PETやMRIによる脳循環測定とラットの新鮮脳切片を用いた虚血・低酸素による組織障害の基礎的研究を統合的に組み合わせた検討を行ってきた。本課題では,PET, SPECT, MRI/MRSなどの臨床データを組み合わせることにより,虚血性脳血管障害における脳循環代謝障害の病態を明らかにし,その成果に基づいて,脳虚血における組織障害の早期診断と予防法の開発に向けた機能診断法の確立をめざす。これまで、MRIでの新たな灌流画像の撮像法を開発しながら、PETと対比した測定を正常者及び脳血管障害患者に対して行い、測定精度の向上が図られ、その妥当性が確認できた。また、脳主幹動脈閉塞性病変のPETによる解析では、病側大脳半球における動脈血管拡張能の残存の程度が脳血流自動調節能の失調と関わりが深いことが確認できた。今回の検討では、血管予備能の測定のみで貧困灌流を予想できるとしていたこれまでの報告が必ずしも正しくないことを明らかにし、血管拡張能の測定が代謝の変化とは独立した生理的指標として測定されるべきとの見解を示した。貧困灌流を予想する上で最も重要な血行力学的指標は安静時の脳血流量であることも確認され、この結果を基にMRIやCTでの定量的血流評価の実現が、今後の虚血性脳血管障害の診断上重要となることが示された。
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