転移のある固形癌を制御し患者の予後を改善するための方法のひとつとして癌免疫遺伝子治療法がある。これまで我々が基礎的研究を進めてきたInterleukin-12(IL-12)遺伝子導入樹状細胞(DCs)を用いた癌免疫遺伝子治療プロジェクトは有望な治療法であると考えられ、早期臨床試験使用可能なGMP準拠のIL-12発現アデノウイルス・ベクター(Ad-IL-12)を東大医科学研究所・治療ベクター開発室において作製中を進めてきた。これまで、臨床用ウイルス産生細胞となるHEK293細胞のバンキングや、使用するアデノウイルス・ベクターの骨格などを作製した。これらをもとに、製造工程を標準作業工程書として文書化するノウハウを蓄積し、18年度ならびにその繰越期間において、着実にベクター作製を進めて来た。これまでに製造工程の内でも、臨床試験用アデノウイルス・ベクターの最終産物を調製するための基盤となる重要な材料である単クローン・ウイルス・ベクターによるMaster Virus Seed Stock(MVSS)の調製に成功し、この品質検定を進めた。このMVSSの品質を厳密に保証するためには、細菌培養検査、エンドトキシン検査、および、マイコプラズマ検査などをGLP水準にて検査することが絶対条件であり、これらが満足すべき基準を満たすことを委託検査により証明した。また、GLP水準検査に先立ってReplication Competent Adenovirus(RCA)否定試験を含む種々の検査を自らの手で確立し、かつ、遂行した。これらの研究、ならびに、検査により、本研究計画の目標である、早期臨床試験に用いることのできるアデノウイルス・ベクター最終産物の完成に、大きく近づいた。
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