研究課題
糖尿病に対する再生治療の臨床応用に向けた基盤技術の開発を目的として、膵細胞集団の中から、極少数しか存在せずかつ形態によって区別することが難しい多能性を持つ幹細胞を、FACS(fluorescence activatedcell sorter)を用いた精度の高い細胞分離法により純化・回収し、それらの分化・増殖・自己複製機構を解析することを試みている。本年度は、膵発生における細胞系譜を系統的に解析することのできるpdx1-DsRed/ngn3-EGFPトランスジェニックマウスを用いて、フローサイトメトリーにより膵幹細胞および膵前駆細胞を分離し特性解析を行った。すなわち、pdx-1-DsRed2及びngn3-EGFPトランスジェニックマウスを交配させ、作出したpdx1-DsRed/ngn3-EGFPトランスジェニックマウス(新生仔)から膵幹細胞および膵前駆細胞を選択的に分離し、各細胞集団の特性をin vitroコロニーアッセイ系を用いて解析した。新生仔膵臓細胞はフローサイトメトリーを用いたDsRed2蛍光強度とSide Scatter(SSC)に基づく2パラメーター解析により、DsRed2陰性画分、DsRed2^<dim>SSC^<mid>画分、DsRed2^<low>SSC^<low>画分、DsRed2^<mid>SSC^<high>画分、DsRed2^<high>SSC^<high>画分の5つの細胞画分に分画化できることが判明した。各細胞集団のクローン性コロニー形成能を解析したところ、クローン性コロニー形成能を有した細胞(colony forming unit: CFU)は、DsRed2^<dim>SSC^<mid>画分に限定的かつ高頻度に存在していることが明らかとなった。DsRed2^<dim>SSC^<mid>画分中に存在するCFUが有する多分化能を解析した結果、コロニー内の一部にβ細胞マーカーであるInsulin、C-peptide、α細胞マーカーであるGlucagon、膵外分泌細胞マーカーであるAmylaseをそれぞれ発現する細胞が存在した。このことから、DsRed2^<dim>SSC^<mid>細胞中に高い増殖能、多分化能を有する細胞が高頻度かつ限定的に存在することが明らかとなった。一方、Pdx1-DsRed/ngn3-EGFPトランスジェニックマウスから分離した膵臓細胞におけるDsRed2(pdx-1)およびEGFP(ngn3)の発現解析から、膵内分泌前駆細胞はDsRed2^<mid>SSC^<high>画分中に限定的に存在すると考えられた。現在、論文投稿準備中である。
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