本研究は、小型高性能な体内埋込式完全人工心臓開発のための基礎研究として、波動ポシプを用いて研究開発中の拍動流の体内埋込式完全人工心臓(波動型完全人工心臓)を基にして無拍動流の波動型完全人工心臓を開発し、波動型完全人工心臓を埋め込んだ動物(成獣ヤギ)を長期生存させ、拍動流と無拍動流の両者に生理的制御法(1/R制御)を適用し、無拍動流における生理的制御の可能性や限界を明らかにするとともに、無拍動流の体内埋込式完全人工心臓に特有の病態生理を解明することを目的とした。今年度は、プロダクトデザインの専門家にデザインコンセプトモデルを捏案いただき、それを基にして波動型完全人工心臓5次モデルを開発した。完成した5次モデルは、直径80mm幅82mmとなり、4次モデルより一回り大きくなったが、3頭のヤギに埋め込んだところ、いずれも問題なく胸腔内に収まり、解剖学的なフィッティングも良好であった。1/R制御下に拍動流から無拍動流への切り替えを行い、前後24時間の連続計測データを基にして、フーリエ変換を用いて周波数解析を行ったところ、拍動流および無拍動流ともに、1/fゆらぎとHFおよびLF領域のピークが観察された。HF領域のピークは拍動流と無拍動流にさほど差が見られなかったが、LF領域のピークは、拍動流の方が著明に大きかった。肝領域は圧反射のゆらぎを、またLF領域は呼吸性変動のゆらぎを反映しているため、拍動の有無は庄反射のゆらぎにはあまり影響を与えないが、拍動流では呼吸に同期した機械的なゆらぎが大きいことが分かった。また、無拍動流完全人工心臓の微小循環の研究を行うために、体内埋め込み式血管新生観察装置の研究開発を行い、さらに生体適合性向上のための新しい人工心臓用材料の基礎研究として、まずはジェリーフィッシュ弁を対象として生体組織とのハイブリッド材料の研究開発を行った。
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