研究課題
基盤研究(A)
本研究の目的は、これまでに我々が開発した細胞移植療法、内耳薬物投与システム(ドラッグデリバリーシステム)などを利用した内耳再生医療技術を用いて、具体的な疾患モデル治療への応用と高度難聴に対する内耳再生医療の臨床応用の基盤となる治療技術開発を行うことである。本年度では、前年度から継続し、ラセン靱帯変性モデルの作製と細胞移植による再生に関する研究を行った。結果、ATP阻害薬をマウス内耳に局所投与することにより、容量依存性に蝸牛の組織学的変性、聴性脳幹反応での聴力閾値上昇に加え、ラセン靱帯を含めた蝸牛側壁機能を反映する内リンパ電位の低下を示すことができた。また、ラセン靱帯に選択的な変性および内リンパ電位の低下を示すモデルを作製することができた。さらに、このモデルに骨髄由来間葉系細胞を移植することにより、内リンパ電位を回復させることに成功した。また、老人性難聴に関連する骨髄由来細胞の役割の解析から、蝸牛内に局在する造血幹細胞由来細胞が組織マクロファージであることを明らかにし、老化に伴う感音難聴に伴い、これらが蝸牛内で増加することが分かった。老人性難聴に伴う蝸牛内の恒常性維持との役割が示唆された。蝸牛神経圧迫モデルでは、ラセン神経節由来細胞株の移植により、組織学的な再生が期待できることが明らかとなった。ラセン神経節変性モデルとして、ウアバイン局所投与モデルを開発し、ES細胞由来神経細胞移植により、電気刺激聴性脳幹反応による統計学的に有意な機能回復を示すと同時に中枢への移植細胞の移動、神経突起伸長を示すことができた。これらの所見は、細胞移植による内耳再生の臨床応用への可能性を強く示唆するものである。
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Front Biosci. 13
ページ: 2165-76
Front Biosci 13, 21
ページ: 65-76
J Neurosci Res (in press)
J Neurosci Res. (in-print)
http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~ent/