<プロトコール>急性期脊髄損傷の治療を積極的に行っている関西医科大学高度救命救急センターに搬入された脊髄損傷患者の中でも比較的重症な患者を対象とする。脊椎整復手術では通常腸骨を脊椎骨折部に移植する。移植骨を採取する時に腸骨より骨髄海綿骨を採取し、細胞プロセッシングセンターで間質細胞の分離培養を行なう。培養により増殖させた間質細胞を腰椎穿刺の要領で脳脊髄液内に投与する。投与後経時的に機能回復、有害事象の発生等を調べる。受傷後6ヶ月の時点での運動機能の回復量を主要エンドポイントとした。 <症例>35歳男性。仕事中約7mの高さより転落し、C5レベルの脊髄損傷を受傷し四肢麻痺、ASIAの機能障害尺度はAであった。NASCISIIにそってメチルプレドニゾロン投与を行った。脊椎の骨折整復を腸骨移植で行い、同時に腸骨より骨髄海綿骨を採取し細胞プロセッシングセンターで培養増Bさせた。そして、受傷後13日目に腰椎穿刺の容量で3.1×107個の骨髄間質細胞を脳脊髄液内に投与した。リハビリテーションは通常通り行われた。機能回復は6ヶ月目まで経時的に行った。ASIA(American Spinal Cord Injury Association)scoring for Standard Neurological Classification of Spinal Cord Injuryでは、主要エンドポイントである運動機能のスコアーは手術時の8点から6ヶ月後には17点まで改善した。ASIAの機能障害尺度はAのままであった。現在も経過観察中です。すべての臨床試験に共通することですが、動物実験のデータがそのままヒトにあてはまるとは限らず、予測不可能な未知の部分は常に存在する。したがって、臨床試験の実施にあたっては科学的根拠に基づいたプロトコールの作成を行い、患者団体やマスコミへ十分な説明を行った後に実施した。
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